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専門家に聞きました:
H²ILシミュレーションで自動車製品開発時間を短縮

文書:Jan van Bekkum(製品開発試験システム部部長)

最新モーション制御の最も困難な用途の一つが自動車試験です。 今日、自動車試験の分野では、車両、モジュール、部品の各開発にあたって必要となる主観的なドライバーフィードバックは、ほとんど全て路上試験を行うことで得られています。 路上試験は大きな費用がかかるにもかかわらず非常に非効率的です。 この問題を解決するため、Moog FCSは「ハードウェア・イン・ザ・ループ」と「ヒューマン・イン・ザ・ループ」を統合する(H2IL)ことで、開発段階での路上試験をできるだけ少なくしようとしています。 このようにして、自動車メーカーとその下請け企業は製品開発時間と試験費用を低減することができます。

ハードウェア・イン・ザ・ループ(HIL)試験は、実際の自動車ハードウェアコンポーネントを模擬環境中で試験するプロセスです。 この技術では、シミュレーションが供試対象のハードウェアとインタフェースをとることでそのハードウェアの通常の運転環境を創出します。 インタフェースは、コンポーネントの運転環境を模擬するという目的を果たしさえすれば、油圧、電気、或いは機械式、またそれ以外の方法を採用しても構いません。インタフェースは、温度、湿度、気圧を模擬するための環境槽の使用が可能です。

Moog FCSは、フライトシミュレーション/試験の分野で、精密な動きを複雑に模擬することについて豊富な専門知識を持っています。また、最新アルゴリズムを活用したソフトウェア、サーボコントローラやから制御負荷アクチュエータまで取り揃えています。 このノーハウと優れたハードとソフトの有効性は、数多くの応用実績に裏付けられています。

H²の背景

R&D時間を短縮するため、航空宇宙の分野では、ハードウェア・イン・ザ・ループとヒューマン・イン・ザ・ループ試験が何年も前から採用されています。 これによって、実際の作業環境の下で、パイロットを試験に参加させてパイロットの反応と感覚が分かるような試験システムで新しい試作部品を開発し検証できるようになりました。

航空機フライトシミュレータでパイロットが訓練を受けているのを見たことがある人は多いと思います。 この場合、唯一模擬されていない部分はパイロットだけで、航空機部品は一切使用されていません。

実際には、このような訓練用フライトシミュレータ以外にも、ヒューマン・イン・ザ・ループとハードウェア・イン・ザ・ループとを組み合わせたエンジニアリングシミュレータがよく使用されています。 このような方法を採る最大の理由は、正常に動作するかどうかも分からない段階で、新しく設計した航空機にパイロットを乗せません。 また、航空宇宙開発向けの試作機は何十億円もするので、費用がもう一つの重要な制限となります。

図1:H²ILの航空宇宙関連への応用例

ハードウェア・イン・ザ・ループ/ヒューマン・イン・ザ・ループ(H2IL)シミュレータは、簡単な作りのコックピットだけのものもあれば、航空機搭載用の新しいコンピュータを試験する場合もあれば、さらには、通常の航空機に付いているような全ての可動部分を備えた完全な航空機構造を有する「アイアンバード」まで様々です。

フライトシミュレータで模擬イベントの帯域幅を真似したい場合、実際にハードウェアを使用して行われるシミュレーションの全ての部分を、十分に高い周波数でシミュレーションにカップリングしなければいけません。 また、空気力学的な負荷を模擬するため、アクチュエータを「アイアンバード」にカップリングします。 試験装置上の表面の一つがブロックされると、パイロットはその操作感覚が得られます。 Moog FCSはそのようなシステムを何年も前から航空宇宙業界に提供しています。

自動車向けのH2IL試験

パワートレインなどの伝統的なハードウェア・イン・ザ・ループ試験の場合を考えてみましょう。パワートレインは未だに動力計上で試験されます。 模擬対象のドライバー入力を6自由度のモーションシミュレータで置き換え、試験ループ中に実際のドライバー(人間)を配置することで、ハードウェア・イン・ザ・ループ/ヒューマン・イン・ザ・ループ(H2IL)シミュレーションを行います。  H2IL試験では、モーションシミュレータのドライバーが「描かれた」性能試験場の道路上で車両モデルを運転し、モーションプラットフォームにカップリングされたパワートレインが動力計上で動きます。 下の図2を参照。


図2:H2ILの自動車への応用例

H2IL試験を採用すれば、自動車システム開発の初期段階を試験所の中で行うことができます。  H2IL試験は、ハードウェア・イン・ザ・ループ試験と比べて以下のような利点があります:

  • ドライバーからの迅速なフィードバック: ドライバーは瞬時に応答し、ソリューションの方向性に関して定性的なフィードバックを行うことができます。ドライバー間の差異を評価することで瞬時にフィードバックが得られます。 新しい車両での特定の条件下でのドライバーの習性を記録することで、客観的なドライバーデータが収集できます。
  • 路上試験時間の短縮: 実際の路上に出ることなく、後で再生できるよう、試験所の中だけでシナリオを作成し記録できます。 路面、周囲条件、車両モデルを模擬できる能力を備えているため、ほとんど全ての道路と気候条件を模擬できます。 試験道路を必要とせず、必要な環境条件が揃うのを待つ必要がないので、開発時間と試験時間を大幅に短縮することができ、計画がたてやすくなります。 例えば、晴天続きにすることも、雨降り続きにすることも自由自在です。
  • コンポーネントの変更が可能: 特定の路面条件で車両がどのように反応するかを調べたいことがよくあります。  これらの技術を使用すれば、システムに少しずつ手を加えながら同じ道路を何度も何度も模擬走行することができます。これによって、A-B-A試験を短時間に繰り返し行うことができます。
  • テストドライバーの安全向上: 危険な路面条件を、より安全で、より管理された環境の中で試験することができます。 ドライバーはシミュレータを操作しているだけなので、危険な道路や周囲条件にさらされることがありません。 新型車両の性能を限界まで引き出すようなトラックシナリオを作成することができます。また、シミュレータには安全制限を設けることができるので、そのようなトラックシナリオを使用した場合でもドライバーの安全は守られ、試験対象の部品が制御不能になったり暴走したりすることがありません。
  • 高い反復可能性: ドライバーエイドを採用することで、ドライバーの運転能力を高めたり、特定の操作をドライバーに教えたりすることができます。 更に、ラップ毎のパフォーマンスを記録することができ、車両のハードウェアを調整したり交換したりすることでラップタイムがどのように変化するかを観察することができます。 また、ラップタイムを画面に表示できるので、ドライバーは前回のパフォーマンスと比べながら運転できます。 そうすることで、道路の特定の部分で「車両」を何回も同じように運転することができます。 道路の特定の部分で何らかのコンポーネントがうまく応答しなかった場合は、結果を記録しながら道路のその部分だけを何回も評価することができます。 これによって、とくにモータースポーツ分野でドライバーが非常に正確な評価を行うことができます。

結び

H2IL試験は車両と車両部品の設計を検証するうえで非常に有効です。 このアプローチは航空宇宙業界では何年も前から採用されていたものであり、自動車業界の進むべき道を指し示していると言えます。 性能試験場や路上での試験が益々コスト高になり、試験プログラムに与えられる時間が益々短くなっているので、並行開発が盛んになり、レースチームにとってだけではなく、自動車メーカーとその下請け企業にとってもH2ILが重要な意味を持つようになります。 Moog FCSは、様々なシミュレータ/試験システム、最新モーション制御ソリューションを市場に提供することで自動車産業に貢献しています。

著者について

Jan van BekkumはFCS(現在はMoog FCS)の創業者の一人であり、オランダとアメリカの両方で合わせて15年間以上も試験システム業界で働いてきました。 以前は航空宇宙試験製品開発を担当していましたが、現在は自動車試験製品開発を担当しています。