ニュースレター
専門家に聞きました:
発電用風車に軸制御弁を応用する
文書:Walter Lenz(エレクトロニクスエンジニアリングEFBバルブチームリーダー)
ムーグが長年にわたって独自のモーション制御技術を提供し続けてきた電力業界では、現在、風力発電が急速に発展しています。この記事では、発電用風車のメーカーやユーザーが、製造プロセスや運転の現場で直面している課題に対して、ムーグが行っている取り組みについて紹介します。機械の急速な大型化と、エネルギー効率向上へのニーズの高まりは、発電用風車の市場トレンドの抱える2つの主要な課題となっています。特にエネルギー効率の改善については、風速が低い、あるいは不安定といった条件の風車設置場所で重要性を増しています。これに対しムーグでは、分散型モーション制御アーキテクチャーと最高性能のバルブを使用し、油圧式のピッチ制御ソリューションを提供しています。
背景
風車の大型化のトレンドは、システムを年中無休で運転するにあたって、さらに困難な課題をもたらします。現在設置されている風車は定格出力が2~3 MWであるのに対して、開発が進められている次世代型の風車の定格出力は5 MW以上にもなります。また、風車の多くは海上のウィンドパークに設置される場合が多く、環境はより複雑なものとなっています。投資の回収率を上げるため、ウィンドパークの建設は不利な立地条件の場所にまで拡大されており、風車のエネルギー効率の向上がより強く求められるようになっています。これには多くの場合、ブレードの設計を最適化し、同じ風速でもより高い出力を得られるようにすることによって対応します。しかし、これに伴い風車のブレードは突風や嵐に対してより敏感な設計になっていくため、高度なピッチ制御システムの必要性はますます高まります。
ムーグのソリューション
発電用風車では、機械、システム、構成部品の信頼性に関して、世界最高レベルの要件が課せられます。特に重要となるのはピッチ制御システムで、このシステムが故障すると、機械に重大な異常が発生したり、最悪の場合には風車全体が損壊するといった事態につながる危険性もあります。ピッチ制御システムには電動方式と油圧方式がありますが、油圧方式を採用する風車メーカーはその理由として主に以下のような利点を挙げます。
- 油圧アキュムレータを採用した簡単で信頼性の高いエネルギー蓄積により、故障を防止できる
- シンプルで頑丈な油圧シリンダー設計により、アクチュエータの破損の危険性が低い
- 停電時には、いかなる条件下でもブレードが安全位置に移動する
- 油圧軸は出力密度が高く、電気式アクチュエータよりも必要スペースが少ない
図1は、油圧式ピッチ制御システムの一例です。

図1
ピッチ制御システムは、風車のハブに搭載されます。このため、電力線と信号線を、回転するハブからナセルに接続する必要があります。油圧動力の接続は、フルードロータリーユニオンによって簡単に行うことができます。スリップリングを経由して接続する電気信号の数を少なくするソリューションとしては、フィールドバスの利用が推奨されます。
図2は、実際の働きを示したブロック図です。ムーグのサーボ比例弁と統合型デジタル軸制御は、以下のような各種のタスクを実行します。
- 内蔵された軌跡発生器により、位置コマンドの補間計算を実行
- PID位置制御
- 軸の同期(3軸のパラレル制御)
- 内部バルブ制御ループと軸制御ループの自己監視
- ホスト(PLC)との通信

トランスデューサからの位置信号は、外部CANバスシステムの負荷を軽減するために追加された予備のCANバスシステムに供給されます。冗長型のCANバストポロジーにより、制御対象の機械に非常事態が発生した場合には緊急停止を行うことが可能です。これは、分散制御アーキテクチャーによって実現されます。各バルブに完全なロジックを搭載することにより、それぞれが自らの位置ループを制御し、PLCシステムと個別に通信しながら、隣の軸の信号を監視できるようにしています。主に次のような項目が安全のため監視されます。
- 位置信号の切断(トランスデューサの故障、ケーブルの断線)
- コマンド信号の切断(バスの通信障害、PLCの故障)
- 隣接する軸との通信の切断(バスの通信障害、ケーブルの断線、バルブの不具合)
- 隣接する軸から特定された緊急事態
このシステムでは、デジタル方式に加え、標準化された通信プロトコルと装置プロファイルを採用することにより、遠隔監視を簡単に実行できます。これは、アクセス自体が困難な場合の多いこの分野において、大きなメリットになります。遠隔制御システムは、以下のような方法で実現することができます。
- ゲートウェイを利用して、CANネットワークメッセージを風車のネットワークバス用のプロトコルに変換する
- ワイヤレス技術を使用する(BluetoothまたはWLAN)
CAN導入の理由
CANの導入は、固定ナセルから回転ハブへのバスデータの送信にスリップリングが必要とされることから、強く推奨されます。ムーグの軸制御弁の製品ファミリーには、いくつかのフィールドバス用インターフェース(例:Profibus、EtherCAT等)が用意されていますが、CANバスは安定性が極めて高く、現場での信頼性も高いことが証明されています。
まとめ
ムーグでは、風力発電機メーカーと緊密に連携して、発電用風車の安全性と、従来ならば不適切とされた設置場所でのエネルギー効率の向上、効果的なモニタリング、ならびに最高の信頼性確立に取り組んでいます。このような取り組みの成果によって、風力発電機のメーカーとユーザーに、運転コストの低減や安全性の向上、設置場所の拡大、メンテナンスやトラブルシューティングの簡素化といったメリットがもたらされます。ムーグのソリューションは数千台の現場の風車システムに搭載され、その実力が証明されています。
著者について
Walter Lenzは、デジタル弁エレクトロニクスの開発業務を担当するエンジニアです。1996年以来、エレクトロニクスとソフトウェアの開発エンジニアとしてムーグに勤務し、2004年からはデジタルバルブエレクトロニクスの開発チームのリーダーを務めています。フルトヴァンゲン大学で精密機械工学の学位を取得しました。



