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タービン向け次世代蒸気弁作動システム
文書:Bernhard Zervas(システムエンジニアリングマネージャー)
発電所では、最大で出力2,000,000 hp(1,500 MW)にもなる大型の蒸気タービンを利用して発電機を回し、電力を生成しています。蒸気の発生には、化石燃料を燃焼させるか、あるいは地熱や原子力エネルギーを利用して水を沸騰させます。発電用のタービンは、通常、発電機に直結されます。発電機は、50 Hzのシステムの場合には3,000 rpm、60 Hzのシステムの場合には3,600 rpmなど、発電システムの周波数に対応した一定の同期回転数で回転しなければなりません。
交流電力の発電には、正確な速度制御が必要です。電力需要の変化に対応するために、タービン用コントローラはタービン内に供給される蒸気の流れを制御し、タービンの速度を制御しなければなりません。この蒸気の流れは、油圧作動式の蒸気制御弁によって制御されます。
タービンロータの加速制御が機能しない状態で速度が限界値を超えると、タービンに流入する蒸気の流れを制御する蒸気制御弁が閉じ、これによってロータが自動停止します。もし蒸気制御弁も機能しなかった場合、タービンは加速を続け、破損する可能性があります。蒸気タービンは非常に高価で、破損時には大きな損害をもたらすことから、常に制御下に置かれている必要があります。このため、蒸気制御弁の油圧作動システムの設計は、安全面での重要な役割を果たします。
現在の蒸気弁作動システム
現在の蒸気弁作動システムには、比例弁と外部アナログ制御回路を接続した位置制御シリンダーが使用されています。このシステムのアクチュエータは、安全用のバネを押し上げてバルブ開き、蒸気を供給します。安全用のバネは、シリンダーの制御ポート「A」がタンクに接続すると、外部からのエネルギーなしで蒸気弁を閉じることができます。

現在の蒸気弁作動システムの簡略図
しかし、こうした既存のシステムには、以下の欠点があります。
- 立会試験: システムの立会試験の際に6~7個のポテンショメータを接続する必要がある。これには熟練した作業者による閉ループシステムの微調整が必要で、時間とコストがかかる。
- 交換: バルブまたは電子カードの交換が困難で、熟練した作業者による複数のポテンショメータの調節が必要。
- 診断:トラブルシューティングできるのは、シリンダーの位置信号についてのみ。
次世代型油圧式蒸気弁作動システム
次世代型の油圧式蒸気弁作動システムを開発するにあたって、以下の仕様が要求されました。
- バルブ交換後に、制御ループのアップグレード、バルブの再調整、ならびに信号のスケーリング調整が必要ないこと。
- アクチュエータ位置センサーの交換後、信号のスケーリング調整が簡単に実行できること。
- 既存のアナログコマンド信号にも対応させることにより、古いタービン施設のアップグレードに利用できるようにすること。
- 先行メンテナンスと故障検知用のモニタリング信号を追加すること。
- 圧力トランスデューサを搭載し、診断用の追加の圧力信号を供給すること。
- 試験済みのスプリング式フェイルセーフ機能を組み込むこと。
こうした仕様を満たすには、デジタル制御装置が必要であることは明確です。ムーグでは、デジタル制御装置と比例バルブを組み合わせた理想的なソリューション「軸制御弁」(ACV)を開発しました。以下の図に、その働きが示されています。
軸制御弁(ACV)による蒸気弁作動システム
蒸気弁作動用にカスタマイズされたACVには、以下のような特徴があります。
- タービン上の既存のソリューションを簡単に置き換えてタービンをアップグレードできる。
- アクチュエータの位置コントローラをACVに統合化。
- 保存されたデジタルパラメータを簡単に呼び出して新しいACVバルブにロードできるため、バルブ交換後、制御ループの調節や信号スケーリングを新たに行う必要がない。
- ACVに搭載されている半自動センサー較正プログラムにより、位置センサー交換後に信号スケーリングを簡単に実行できる。
- ACVは既存のアナログコマンド信号に対応しているので、タービンのアップグレードに利用できる。
- フィールドバス接続用インターフェースにより、先行メンテナンスに必要な信号を監視できる。
- フィールドバス接続用インターフェースにより、リモートメンテナンスを実行できる。
- 制御電子回路用の電気キャビネットを必要としない。
- システム診断用の圧力トランスデューサを「A」ポートに搭載。
- 既存のスプリング式安全システムを維持したスプール設計。
カスタマイズされた軸制御弁(ACV)は、指定された機能をすべて搭載し、システムを簡略化します(電気キャビネットは不要です)。リモートメンテナンス等の包括的な診断機能を提供し、各種の重要な信号を読み込み、先行メンテナンスを可能にします。この新ソリューションは、新たに製作されるタービンだけでなく、既存タービンの改造、アップグレードにも適しています。
アナログ制御とアナログ弁エレクトロニクスの組み合わせでは、コマンド信号と実際の位置信号との差のみが監視対象になります。差が設定されたレベルを超えると、安全上の理由により、フェイルセーフ機能が作動しアクチュエータは停止、あるいは規定の終端位置に移動されます。機械と油圧アクチュエータシステムのホストコントローラは、この状態を未知の不具合と見なし、非常停止後にメンテナンススタッフが原因を調査するため、トラブルシューティングのためのダウンタイムが発生します。
一方、デジタル軸制御弁(ACV)による最新の油圧式作動システムは、アクチュエータの位置だけでなく、弁そのものも制御することができます。現在、先行メンテナンス手法を取り入れようとする工場が増えていますが、これを行うには、油圧作動システムと部品の実際の状態と摩耗について、大量の情報を入手する必要があります。このような情報は、サーボ比例弁の静的・動的な挙動や、組み込まれたバルブ/軸のエレクトロニクスの温度、センサー信号、アクチュエータの漏れ(シールの摩耗)などを監視して、設定された公差値と比較することにより得ることができます。デジタルバルブの軸制御電子回路は、関連するすべての内部制御データを連続処理モニタリング用に提供します。軸ごとの大量のステータス情報をホストコントローラに対して継続的に送信するために、軸制御弁(ACV)にはフィールドバス用インターフェースが欠かせません。
新システムでは、取得されるデータによって油圧アクチュエータの摩耗を監視し、その結果に基づいて次回の定期メンテナンス時に先行メンテナンスを実行することができます。データにより必要となるメンテナンスの情報が得られるので、定期メンテナンスに合わせて予備部品を事前に準備し、ダウンタイムを最小化することができます。軸制御弁の交換が必要な場合には、すべての制御パラメータをそのまま新しいバルブにコピーするだけで良いので、微調整や調節が不要で、ダウンタイムはさらに短縮されます。これをアナログバルブの場合の非常停止と比較すれば、デジタル診断によって時間というコストを大幅に削減できることが分かります。
著者について
Bernhard Zervasは、現在、ドイツムーグの一般産業部門のシステムエンジニアリングマネージャーです。30年以上にわたり油圧業界での国際的な業務経験を積み、特に油圧閉ループ制御、電動機械、ハイブリッド技術の応用分野に精通しています。



