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鋼材スキンパスミル向け電気油圧サーボ制御システムの改造プロジェクト

文書:Jeff Jones(ムーグオーストラリア、技術サービスマネージャー)、Peter Heitmann(ムーグオーストラリア、事業開発/セールスマネージャー)

ムーグは、New Zealand Steel(NZ Steel)社のスキンパスミル設備の改造プロジェクトに対し、特殊な制御システムと高度な油圧技術を提供しました。これにより亜鉛めっき鋼板の品質向上が実現し、ニュージーランド国内のユーザーは高い表面品質の製品を購入できるようになりました。

一新したNZ Steel社の工場には、ムーグが設備の改造に合わせて提供した最新の電気油圧サーボ制御システムが導入されており、高性能の電気油圧テクノロジーを提供するムーグの高い技術力を示す端的な例となっています。

スキンパスミルとは、冷間圧延鋼や被覆鋼の表面仕上を改善するために行われる仕上工程です(工程の詳細は図を参照)。ミルは単一または複数の圧延工程から構成され(NZ Steel社では縦型二段ロールスタンドのユニットを使用)、多くの場合、1.5m幅の板の片面に最大2.5MN程度の力を加えます。実際にかかる力は、表面仕上や厚さなどといった入力パラメータによって異なります。

今回のプロジェクトでは、スキンパスミルは金属材料に対する亜鉛めっき工程ラインの一部分として組み込まれています。このラインで生産される製品は、白物家電、屋根ふき材、クラッディング材、構造部材などに使用されます。

ムーグは2006年初めに、ムーグオーストラリアの販売代理店であるニュージーランドのGlobal Hydraulics & Controls(GHC)社より、スキンパスミル制御システムの改造業務を受注するための支援要請を受けました。この案件には他国からの競争相手も参入していたため、GHC社は、付加価値のある優れた技術ソリューションと、そして現地サポートを強みとして提案することが重要でした。ムーグとGHC社は、ムーグサーボコントローラ(MSC)プラットフォームを使用したオンラインデモを行い、協議を重ねました。こうした活動の末に、GHC社は改造業務の受注を獲得しました。大きな勝因の1つには、合同作業チームを編成、提案したことが挙げられます。このチームにはGHC社のメンバーに加え、ムーグオーストラリアの制御および油圧ソリューションの専門家がエンジニアリングサポートとして参加しています。

この改造プロジェクトでは、工場を休業する4日間のうちに製造ラインのシステムを一新しなければならないという厳しい条件も課されていました。新システムは設置後すぐに機能しなければならず、トラブルシューティングやチューニングをしている時間はありません。確実に成功を収めるため、GHC社はダミーのミルスタンドを製作してメインラインと並行して稼働させ、ムーグ製の制御システムが機能することを確認するとともに、NZ Steel社のCITECホスト制御システムとの接続を100%検証しました。スキンパスが確実に機能し、ムーグのコントローラとNZ Steel社のCITECシステムとの間で制御が適切に分担されるよう、すべてのプロセスに関して詳細なイベントマップが作成されました。

GHC社のPeter McArley氏は、このプロジェクトの担当マネージャーとして、社内チームの提案作成業務の指揮を執り、受注後にはプロジェクトの実行を監督しました。ムーグオーストラリアの事業開発マネージャーであるPeter Heitmann、技術サービスマネージャーのJeff Jones、ならびにエンジニアリングチームは、McArley氏の活動をサポートしました。顧客側のプロジェクトリーダーを務めたのは、NZスチールの主任エンジニア、Damien Little氏でした。同氏は、プロジェクト全体の管理業務の他にも、実装された制御手法が工程要件を満たしているかどうかの検証業務も担当しました。同氏のサポートには、プロジェクトエンジニアのJohn Sayer氏が就きました。

既存のミルスタンドは30年以上前のSack社製のもので、設置業者はすでにサポートを終了していました。スペアパーツはもはや入手困難となり、社内のメンテナンス技能も徐々に失われつつありました。

制御システムの仕様は、プロジェクトの発注から設置までの3か月の検収前期間に、NZスチールのエンジニアも参加して決定されました。ここでは、期待される性能パラメータ、オペレーター制御インターフェース、ならびにムーグ製コントローラと改造されたAllen Bradley-CITECライン制御システムとの間で使用される通信プロトコル(産業用イーサネットIP)が決定されました。

新システムの大きな利点として、バルブの駆動限度やランプ速度、ゲイン、駆動特性などを設定パラメータとして組み込んだ統合型制御システムを使うことで、制御エンジニアだけではなく、トレーニングを受けた一般の技術者でも設定作業を実施できるようになったことが挙げられます。

運転時のプロセス制御の手順では、ロールを鋼板上に持ち上げ、その後これに対して制御した負荷を加える動作が必要となります。この動作制御は概念としては単純ですが、実際には複雑な動きが要求されます。というのも、ロールの両端は同期制御されているものの、測定機能の限界やロールの軸受の遊びの差などによる誤差により、どちらか片方が先に鋼板に接触することになるからです。

これに対する解決策は、オーバーライド機能を使って力を低レベルに保ちながらロールの両端を位置制御し、同期させて鋼板上に持ち上げるというものでした。ロールが鋼板上に持ち上げられる際、ロールの両側が接触してトップロールの軸受の遊びが吸収されるまでは、力を抑制したオーバーライドの外部制御ループが機能します。位置制御から低レベル力制御への移行は、シームレスに行われます。

この初期動作の力は、両方のロールを持ち上げるのには十分ですが、鋼板を噛み込んだり詰まらせたりするだけの強さはありません。噛み込みなどが起きると、500m分の鋼板が製品として使用できなくなり、ラインをリセットするために2日間のダウンタイムも発生するため、この制御は非常に重要です。

MSC digital microprocessor-based controller

両側が接触してすべての軸受の遊びが吸収されたら、ランプ速度で力を徐々に上昇させ、要求される負荷レベルにします。このとき、オーバーシュートはほとんど発生しません。

この低レベル力制御(スキンパスロール制御とも呼ばれます)は、MSCデジタルマイクロプロセッサをベースとしたコントローラ上に実装されています。この制御手法のMSCへの実装設計とプログラミングは、ムーグのエンジニアが担当しました。ソリューションの堅牢性と完成度を確保するため、プロセスのすべての作動モードについて詳細な分析を行いました。コントローラは、閉ループ位置制御動作、スキンパスロールの力制御に加え、アクチュエータを作動させる補助油圧バルブの制御も行います。さらには、ラインとともに連続運転を要求される油圧パワーユニットに対してサポート機能を提供します。このシステムによって、高度な先行型管理を実施することが可能となり、生産性の向上とユーザーフレンドリーな作業環境が実現しました。

新システムでは、個々の負荷シリンダーを制御するために使われていた既存のサーボ弁マニホールドアセンブリーを交換する必要がありました。負荷シリンダーの通常の戻りストローク動作は、ロールの自重に依存します。しかし非常時には、ロールを迅速かつ確実に鋼板から離すことができるよう、強制動作させる必要があります。

ここでは、ムーグの直動高性能サーボ弁(DDV)、電気フィードバック制御(FEB)、位置フィードバック機能を備えた油圧カートリッジ弁を使用し、最新のデジタルマイクロプロセッサ製品を油圧システム内で活用することで、高レベルの安全インターロックと、プロセス内部での先行管理を実現しています。

今回の設計では、デジタルエレクトロニクスを搭載した高性能の可変容量ポンプである、ムーグのデジタル制御付きラジアルピストンポンプ(RKP-D)2台を採用しています。RKP-Dコントローラは、システム内にシームレスに導入でき、ポンプの圧力と流量をシステムの要求に応じて制御し、使用電力の最小化とシステムの最適チューニングを可能にします。これにより、ランプ制御とレベル限界を用いてある圧力レベルから別の圧力レベルに移行する際、製品に損傷を与える可能性のあるオーバーシュートを防止できます。負荷シリンダーの油圧制御モード時には、ロールを鋼板の表面に下ろす際、直接制御弁に開ループのスイッチ動作を行うため、このことは非常に大きな意味を持ちます。

              

新システムは、スキンパス制御プロセスによってすでに18か月以上、安定した動作でダウンタイムもなく稼働しています。

スキンパスミルで行われる処理

このプロセスでは、冷間圧延され、焼き鈍した帯鋼に対して、表面仕上げが行われます。これによって平坦度が向上し、最大伸び長さが抑制されます。帯鋼の表面は、錆を防止するため、防錆オイルで保護されます。

冷間圧延鋼と熱間圧延鋼では、表面の状態が異なります。すべての鋼は、最初は熱間圧延によって製造されますが、一部はその後に冷間圧延されます。基本的に、熱間圧延では鋼を炉内で再結晶温度まで加熱して、複数の連続する圧延ロールに通すことによって目的の寸法にします。冷間圧延鋼の場合、熱間圧延時に途中まで寸法を絞り、いったん冷却してから、それ以降は加熱せず一連の絞り圧延機に通します。1つの絞り圧延機から次の圧延機に移る間に粒状組織に変化が起こり、鋼は、より硬くてもろい状態になっていきます。こうした鋼の脆化を緩和するため、冷間加工の合間には、鋼を焼き鈍して「軟化」させる必要があります。焼き鈍しは、鋼を再び炉に通して、再結晶温度に加熱することによって行います。極度の高温は金属の表面を焼き、うろこ状の付着物を発生させるため、鋼は焼き鈍し直後と最終冷間加工直前の2回に分けて酸洗タンクを通さなければなりません。表面に光沢が必要な場合、2回目の酸洗いは必須となります。ただし、こうした表面の焼け、すなわち酸化は、いわゆる大気焼鈍炉を使うことによって大幅に抑制することができます。大気焼鈍炉の内部は無酸素状態であるため、うろこ状の付着物は生成されないのです。酸素がないため酸化は起きず、鋼の表面は炉に入る前とほぼ同じ状態に保たれます。

熱間圧延鋼と冷間圧延鋼の表面を比較すると、化学反応性に大きな差があります。冷延鋼は粒子が細かく表面が滑らかで、細孔は少なくなっています。これは、冷間圧延によって穴の部分が折りたたまれてふさがれる効果があるからです。表面に穴が少なければ、酸やアルカリ、リン酸化合物などの化学物質に反応する表面積がそれだけ小さくなります。一方、熱延軟鋼には細孔が多いため、硬鋼と比べると化学反応しやすくなります。軟鋼の場合、冷間圧延と焼き鈍しを経て最後の「スキンパス」工程を実施します。ロールを通過する間、絞られる寸法は50μmにも達しません。焼き鈍し後、鋼を複数の冷間ロールに通して光沢のある表面を得る硬鋼の焼き戻し工程とは異なり、この最終的な冷間絞りには、細孔を閉じる効果はありません。

仕様概要:スキンパスミル改造プロジェクト

作動範囲:         50 ~ 250 bar
圧力:                 再現性0.25 bar
位置:                 静止誤差0.1mm以下
軸間追従誤差: 0.2mm以下
ロール重量:     10,000kg
上昇速度:         8mm/秒
下降速度:         10mm/秒

著者紹介:

Jeff Jonesは、ムーグオーストラリアの技術サービスマネージャーです。1980年よりメルボルンオフィスで活動しており、それ以前にはドイツムーグに8年間勤務していました。メルボルンにあるモナッシュ大学工学部を卒業し、ムーグでさまざまなエンジニアリング業務を経験しています。

Peter Heitmannは、ムーグオーストラリアの事業開発/セールスマネージャーで、1991年に入社し、メルボルンを拠点に活動しています。ニュージーランド・オークランドのAUT大学で機械工学を専攻し、電気油圧ソリューションの設計とセールスの分野に25年の経験を積んでいます。