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ヘリコプター試験の高速化

文書: Marie-Laure Gelin(欧州地域マーケティングマネージャー)
Tom Pierce(アジア太平洋試験/シミュレーションマーケットマネージャー)
Stephen Ploegman(航空機用試験システム担当プロジェクトマネージャー)

 

 

航空機用試験は、軍用機、民間機を問わず機体の設計と構造の精度を評価するために行われ、使用する負荷に関して最高レベルの正確性と再現性が要求されます。

この記事では、ムーグがお客様と緊密に協働して最先端のハードウェアとソフトウェアを活用し、複雑かつ柔軟性に富んだ試験システムを開発した最近の事例を2つ紹介します。ムーグが韓国航空宇宙研究院(KARI)と共同開発したヘリコプター試験システムには、フルスケールの構造試験と12種類の異なるヘリコプター試験を実施する能力があります。アグスタウェストランド社(AugustaWestland)向けに開発したヘリコプター回転翼の疲労試験システムは、従来技術の限界を超える性能によって、ヘリコプターの地上および空中におけるさまざまな操縦条件下で生じる複雑な負荷データを提供することができます。これら2つの試験システムは、専用のテストアプリケーション用サーボコントローラ(最大500の制御チャンネル)とリアルタイム・イーサネット対応で正確性と再現性、安全確保を実現できます。

航空機用試験のモーション制御に特有の課題

民間および軍用航空機メーカーは、静的試験と疲労試験において、動作の正確性と構造部材に適用する試験負荷の再現性に加え、試験対象に対する安全性を最も重視します。航空機の構造部と構成機器は高価なものであるため、さまざまな工学分野と専門領域に渡る高度な経験が要求されます。

ムーグは、世界で高い知名度を誇る航空機メーカーと試験施設向けに、試験装置、シミュレーションシステムおよび関連製品の設計、製造、インテグレーションを行っています。ムーグでは、航空業界のニーズを満たすため、リアルタイム・イーサネットのインターフェースやデータ取得技術、高性能試験システムの制御に関する技術、そしてテストの高速化手法の導入を推進しています。これによって航空機メーカーは、増加を続ける様々な分野の試験を簡素化するとともに、セットアップの所要時間を短縮し、試験の実施速度を最適化することが可能になっています。もちろん、こうした高速化を実現する一方で、試験の正確性と試験対象の安全レベルはつねに維持されています。

試験の高速化は航空機メーカーにとってビジネス成功のための重要な課題であり、試験施設における業務改善に欠かせないものです。試験システムは、さまざまな条件と負荷状態における航空力学的な要素と疲労に関する要素を完全かつ包括的に試験するために、2~6年という長期間に渡って運用できる必要があります。ムーグでは、リアルタイム・イーサネットをベースとする通信インターフェースの組み合わせを導入することによって、サーボコントローラの機能を増強するとともに、帯域幅を拡大しました。スピードの向上は、グラフィックスの高速描画、最大500の制御チャンネルの正確な同期、待ち時間の短縮、特定の安全処理の管理を徹底することにより、試験片の破損に対するリスクを解消します。さらに、これらの試験システムはセットアップが迅速かつ簡単に行え、ユーザーの既存の試験施設のインフラとも統合することができます。

その他のタイプの試験としては、航空機の飛行制御装置、着陸装置、ならびに油圧装置の研究とテストに使われる「アイアンバード」があります。この場合、航空機の各種システムの機能確認と耐久試験の両方が対象になります。ムーグのソリューションではコンピュータ制御の油圧式負荷システムによって、飛行中の航空機が受ける負荷を再現します。試験の際、ユーザーは実際の測定値を使って数学的な定義式に変更を加えたり、任意のチャンネルや疑似チャンネルの値をパラメータとして適用したり(例:リアルタイムの計算更新)といった方法も含め、任意の入力と出力の組み合わせによって、ほぼ自由にリアルタイムの相関関係を定義することができます。これにより、異なるフライトフェーズごとに個別の負荷-角度曲線をプログラミングして、アイアンバード試験中にシーケンスを自動作成することが可能になります。これを実施するには、従来よりも高周波の通信帯域に対応し、大規模な複数チャンネルの試験をより高速かつ安全に実施する完全統合型の複数チャンネルシステムが必要です。

韓国航空宇宙研究院向けのヘリコプター試験システム

ムーグは、誇りを持ってKARIの試験システム開発プロジェクトに参加しました。このプロジェクトでは、ムーグがヘリコプター構成部品向けの幅広い種類の構造試験と疲労試験を実行できる最先端のシステムを提供しました。このシステムは、韓国国防省が16年以上の期間に渡って245台の多目的ヘリコプターを開発・配備する数十億米ドル規模のプロジェクトの一環として発注しました。

KARIが同プロジェクトの発注先としてムーグを選択した主な理由は、過去にこの種の試験装置を設置した経験があり、ヘリコプターの試験に関する知識も豊富で、韓国人エンジニアによる技術サポート体制を整えている点でした。このシステムは2008年に完成し、わずか3日間の作業で設置されました。現在ではフルスケールの構造試験と12の独立したヘリコプター試験に活用されています。

この高度にカスタマイズされた試験装置には、以下の機能があります:

  • 16制御チャンネルのキャビネットを6セット搭載
  • 256チャンネルのデータ取得システム
  • コマンド発生装置(リアルタイムフロントエンド)とローカル制御ループ間におけるリアルタイム・イーサネットによるデータ通信を可能にするソフトウェアの新機能
  • 専用のイーサネットインターフェースによって、ロードセル、位置およびスペクトルのデータを試験制御装置からデータ取得ユニットまで送信できる。また、試験制御装置からデータ取得ユニットに対してコマンド(例:スナップショット取得コマンドなど)を送信して有効化するための通信ラインにも活用可能。

図:ムーグ試験システムのアーキテクチャ

 

このシステムはまた、試験結果の分析と比較をより高速に、効率よく実施することができます。2つのシステムはイーサネットを通じて接続されているため、KARIでは、荷重制御システムとデータ取得ユニットのデータを、タイムスタンプを使って直接照合することができます。これによって、すべてのデータはハードディスクに保存およびアーカイブされ、試験後の分析に使用できるようになりました。現在、KARIの試験プログラムでは、8種類の個別の構成部品に対する試験を同時に実施しています。KARIではヘリコプター開発プログラムの展開に伴い、より強力な試験の遂行を目的とする施設の新設が計画されており、ムーグの試験装置は、これにも対応できるように設計されています。

ムーグの試験制御装置は独自の制御ループを搭載しており、最大500のサーボチャンネルに対する多チャンネル複合試験を行うことができます。また、使用するソフトウェアの活用によって複雑な試験シナリオにおける高い柔軟性と性能が実現できるため、高度な航空機試験に非常に適しています。ムーグが提供するサーボコントローラは、航空機本体からサブアセンブリ、そして構成部品に至るまでの構造試験(静的・動的)を実施することができます。

写真:ムーグの航空機用試験制御装置

 

アグスタウェストランド社向けヘリコプター回転翼疲労試験システム

ヘリコプターの開発過程において重要な意味を持つのが、回転翼の疲労試験です。運転中のヘリコプターの回転翼は、フラッピング(上下動)、ラグ(水平動)、ねじれ、遠心力(CF)によって大きな負荷を受けます。フラッピングとラグは、ブレードの曲げとせん断負荷によって発生します。データ取得ユニットと組み合わせて使用されるムーグの航空機試験システムは、これらの要素をすべて再現できるように設計され、ブレードにかかるフラッピング、ラグ、ねじれモーメントの間の関係をつねに要求される状態に設定することができます。

アグスタウェストランド社では、ブレードステーション(スパン方向位置)ごとに遠心負荷、フラッピング、ラグ、ねじれモーメントの値によって、試験条件を定義しています。モーメントとねじれは、ブレードに沿って取り付けられた歪みゲージによって計測されます。歪みゲージは疲労試験中に破損するおそれがあるため、制御ループを閉じるのに使うことはできません。そのため制御装置は、負荷アクチュエータを強制モードで制御し、6つのロードセルを使って個々のループのフィードバックを提供しなければなりません。

こうした仕様を満たすためにムーグが提供した航空機用試験制御装置は、6つのサーボ制御チャンネルを持ち、最新のクアッドコアIPCプロセッサとリアルタイムイーサネットプラットフォームを搭載することによって、ヘリコプターの回転翼にかかる複雑な負荷領域を再現します。疲労負荷は、地上および空中における操縦の仕方によって変化します。ムーグの航空機試験ソフトウェアは、複数レベルの命令ブロックを使ってこれに対応します。ローターブレードの疲労負荷設定は200の命令ブロックから構成され、合計で1,000万回の疲労サイクルを実施します。

図:ムーグの航空機試験システムは、テストエンジニアが必要とする機能をすべて単一のソフトウェアスイートとして提供することができ、アグスタウェストランド社の疲労試験アプリケーションに最適のマッチングであることが示されました。

 

結論

これらのムーグ試験システムの設置例では、ムーグ製ソフトウェアと試験制御装置を組み合わせた完全統合型の複数チャンネルシステムと、リアルタイムイーサネットインターフェースが使われています。これらの試験システムは、従来よりも高周波の通信帯域に対応し、大規模な複数チャンネルの試験をより高速かつ安全に実施することができます。ムーグでは、高度なテクノロジーを使用し、世界トップクラスの製品とアプリケーションノウハウを生かすことによって、高い精度と再現性を保ち、安全性を維持しながら高速テストの複雑な要求に応えました。ムーグでは、航空機試験などの分野における専門的な経験を生かし、マルチチャンネル制御と高速スループットに対する同種の複雑な要求を持つ他の産業向けに、高度なソリューションを提供することができます。

 

付録A: ヘリコプター回転翼疲労試験制御システムの詳細解説

回転翼に正しい曲げモーメントを適用するために、直列クローズドループ制御が使われています。これは、内部ループによって6つのサーボ油圧負荷アクチュエータを強制モードで制御し、外部ループによって最新の曲げモーメントの誤差に基づくアクチュエータのコマンド設定点を調節するというものです。

歪みゲージが測定されると、その値はデータ取得ユニットによって曲げモーメント値に変換され、双方向イーサネット通信インターフェースを介してムーグの制御装置に送信されます。航空機用試験ソフトウェアは、補正用PIDループをソフトリアルタイムで使用することにより、こうした実際の曲げモーメント値を達成すべき曲げモーメント値と比較します。PIDループの出力は、6x6の転送マトリクスを使って個々の強制ループの強制コマンドに変換されます。この転送マトリクスは、航空機試験ソフトウェア内にある共有メモリーとも呼ばれるオンライン計算チャンネルを使ってセットアップされます。

ラグによる動きの転送関数とフラッピングおよびトルクによる動きの転送関数は切り離されているものと仮定すると、ブレードの曲げモーメントとブレードにかかる力は以下のようにフラッピング(上下動)、ラグ(水平動)、ねじれ、遠心力(CF)による負荷で関係づけられます。

 

フラッピングとラグは、ブレードの曲げとせん断負荷によって発生します。データ取得ユニットと組み合わせて使用されるムーグの航空機用試験システムは、これらの要素をすべて再現できるように設計され、ブレードにかかるフラッピング、ラグ、ねじれモーメントの間の関係をつねに要求される状態に設定することができます。

アグスタウェストランド社では、ブレードステーション(スパン方向位置)ごとに遠心負荷、フラッピング、ラグ、ねじれモーメントの値によって、試験条件を定義しています。モーメントとねじれは、ブレードに沿って取り付けられた歪みゲージによって計測されます。歪みゲージは疲労試験中に破損するおそれがあるため、制御ループを閉じるのに使うことはできません。そのため制御装置は、負荷アクチュエータを強制モードで制御し、6つのロードセルを使って個々のループのフィードバックを提供しなければなりません。

こうした仕様を満たすためにムーグが提供した航空機用試験制御装置は、6つのサーボ制御チャンネルを持ち、最新のクアッドコアIPCプロセッサとリアルタイムイーサネットプラットフォームを搭載することによって、ヘリコプターの回転翼にかかる複雑な負荷領域を再現します。

疲労負荷は、地上および空中における操縦の仕方によって変化します。ムーグの航空機用試験ソフトウェアは、複数レベルの命令ブロックを使ってこれに対応します。ローターブレードの疲労負荷設定は200の命令ブロックから構成され、合計で1,000万回の疲労サイクルを実施します。

ただし、試験実行中に命令される力は曲げモーメントの行列乗算になります。その結果、関係式は以下の通りになります。

 

ここで、定数c1~c9は、定数k1~k9の逆数です。

行列定数c1~c9は、システム同定プロセスの間に決定されます。このプロセスでは、個々のアクチュエータが複数の代表的な力を出すように制御されます。適用されるそれぞれの負荷について、曲げモーメントが計測および記録されます。転送マトリクスの定数は、制御装置のスクリプト機能を使って試験のスタ―トアップの際に制御装置に読み込まれます。

内部の力のループコマンドは瞬時にではなく、間隔を置きながら修正されます。これは、歪みゲージを破損から守る観点から、曲げモーメントの情報が信頼できるものであるかどうかを、システムが外部ループに反応する前に確認する必要があるためです。制御システムは、大規模なエラーが検出された際や、非常停止スイッチが作動した場合にはテストを制御しながら停止します。

 

著者について

Marie-Laure Gelin(欧州地域マーケティングマネージャー)
Thomas Pierce(アジア・太平洋地域試験/シミュレーションマーケットマネージャー)
Stephen Ploegman(航空機用試験システム担当プロジェクトマネージャー)