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北京の地下鉄がトレーニングの現実感を高める地下鉄ドライビングシミュレータを導入

文責: Bai Yuan(ムーグ中国、テストおよびシミュレーション・セールス・マネージャ)

ムーグの6自由度(6-DOF)モーションベースは、ペイロードの大きなフライトシミュレータから最先端のレーシングカーシミュレータに至るまで、効果的で現実感の高いトレーニングが必要とされる分野で応用されています。先頃、ムーグの6自由度シミュレーション技術は、北京の地下鉄の運転士が受ける列車の運転トレーニングなどこれまでとは異なる分野で重要な役割を担い始めました。

ムーグは、6自由度(6-DOF)モーションベースシステムの設計と製造で世界をリードし、世界各国のフライトトレーニングセンターや軍事施設に対して、高度な機能を搭載した信頼性の高いフライトシミュレータを提供しています。また自動車メーカー各社も、車体全体の開発や運転トレーニングシミュレーションの中で、車体性能とトレーニング効果を高めるために導入しています。

同済大学のコンピュータシミュレーション・制御研究所(以後、「同済大学」)は、中国国内で鉄道用ドライビングシミュレータを製造する主要な施設の1つです。同済大学では、中国で最も古い地下鉄である北京地下鉄1号線向けに最先端のドライビングシミュレータを製造する依頼を受けた際に、ムーグの6自由度モーションベースシステムを導入することにしました。この鉄道ドライビングシミュレータに対するモーションベースの先駆的な応用により、ムーグは、すでに実績のある軍用機およびドライビングシミュレータへの応用に加えて、モーションシステム製品を中国の公共鉄道市場に導入することに成功しました。

鉄道ビジネスの課題

中国では、鉄道網の拡充にともなって、より多くの運転士を育成することが求められています。地下鉄会社は、育成中の運転士に対し、安全運転に関するトレーニングをいかに効率よく行うかという難しい課題に直面しています。1960年代に中国初の地下鉄が北京に開通して以来、運転士の教育には、静止した運転室に走行中の列車の音声と画像を流すなどといった簡素な仕組みの列車ドライビングシミュレータが使われてきました。ただしこれらは、実際の動的なシミュレーション効果が含まれていないため、効果は限られたものでした。

同済大学と、エンドユーザーである北京地下鉄は、モーションベースを組み込んだ地下鉄ドライビングシミュレータの開発に世界で初めて取り組むことになりました。いずれの関係者も、このプロジェクトに高い期待を寄せ、モーションベースシステムに対して、必要床面積、技術仕様、シミュレーション性能、消費電力、制御および信頼性のレベル等に関して厳しい仕様を定めました。

ソリューション

ムーグは、同済大学が統合化を担当するシミュレータに対して、ヘキサポッドベースと制御キャビネット(コントローラおよび制御ソフトウェア)を含む6自由度モーションベースを提供しました。

ムーグの6自由度モーションベースは、以下に挙げるような主要なテクノロジーを搭載することで、列車の実際の動きが変化するのを、リアルタイムで再現することができます。

  • 6本のアクチュエータアームの伸縮を制御することにより、モーションベース上の運転室の動きを再現する技術
  • 加速度と変位の出力を変化させることにより、走行中の列車の速度、加速、減速、方向転換、線路条件をシミュレーションする技術

これらに加えて、統合化された制御ハードウェアとソフトウェアによって、モーションベースからモーションデータを取得しつつ、オンラインでモーションベースに対して位置変更命令を実施することも可能となっています。モーションベースによって、運転士は運転室内で現実的な車両の動きを体験できる一方、運転室の動きを制御することにより、今日における最先端のシミュレーション技術であるヒューマン・イン・ザ・ループ(H2IL)のドライビングシミュレーションを実現しています。

ムーグの6自由度モーションベースのもう1つの強みは、電動式であることです。ムーグは、歴史のある油圧モーションベースメーカーであると同時に、最先端の電動モーションベースの設計においても業界をリードし、最も過酷な性能要件にも対応することができます。従来の油圧式モーションベースと比較して、ムーグの電動モーションベースには以下の特長があります。

  • 高圧油圧回路が存在しないため、現場の安全性が向上する
  • 消費電力が70~80%削減され、エネルギー効率が向上する
  • システム構成部品の点数が少なく、信頼性が高い
  • 保守と運用のコストパフォーマンスが高い

ムーグのヘキサポッド型システムは、独自の設計によって、従来型の油圧モーションベースと比較して設置スペースが半分以下で済むことから、貴重な試験施設内のスペースを節約するとともに、施設全体のコスト削減に貢献します。ムーグが開発したモーション制御ソフトウェアは、スムーズな性能と実物に近い動作によって業界および市場関係者から高く評価されています。


トレーニング用シミュレータに使用されている6自由度モーションベース

シミュレータの統合化が行われている間、ムーグは欧州と中国国内のスタッフから構成される専任の技術チームを構成して対応に当たりました。プロジェクトの早期段階では、同済大学の技術陣によるモーションベースシステムの設置と運転を支援しました。また、ムーグのソフトウェアエンジニアは、プロジェクトの後期段階において、ソフトウェアのテスト、ユーザーのトレーニング、技術サポートをユーザーの現場施設内で実施しました。

同済大学のXitang Tan氏は、次のように述べています。「私たちにとって、これほど複雑なプロジェクトを経験したのは初めてのことでした。このプロジェクトは最先端の列車シミュレータの開発プロジェクトでもあったため、これを確実に成功させるためにも、モーションベースシステムに対して非常に高い忠実性を要求しました。運転士が現実的な運転感覚を体験することで、トレーニングの効果を最大化する必要があったため、システムには正確な動きの再現とフレキシビリティを求めました。ムーグのモーションベースは、高い忠実性だけでなく、電力消費と運転ノイズの特性も非常に優れていることが分かりました」。

結果

「このシミュレータは、列車の動きをよく再現しています。非常に現実感があって、車両は静かです」。ベテラン運転士のこの言葉を聞いたとき、ムーグのチームは笑顔を隠せませんでした。ムーグの技術チームと統合化を担当した同済大学、ならびにエンドユーザーである北京地下鉄は、2年間をかけ、最終的なシミュレーションドライブモデルとパラメータテストを完了しました。この列車ドライビングシミュレータは、現在、北京地下鉄1号線の正式な運転士育成プログラムで利用されています。

次のステップ

同済大学のプロジェクトリーダーを務めるXitang Tan氏は言います。「このプロジェクトの成功によって、私たちの新たな受注獲得の可能性と、ムーグとの協力関係のさらなる発展の可能性が大きく広がりました」。

ムーグの6自由度モーションベースは、世界の航空機、自動車および鉄道のシミュレーション市場で85~90%のシェアを占めています。北京地下鉄のプロジェクトによって、ムーグは中国国内で初めて、鉄道ドライビングシミュレータ向けにモーションベースを納入しました。このプロジェクトの成功をきっかけとして、現在は中国の鉄道ドライビングシミュレーション市場でのさらなる成長を目指し、他の複数のインテグレータとも共同事業に関する協議を進めています。

著者について

Bai Yuanは、中国ムーグのテストおよびシミュレーション・セールス・マネージャです。同氏は、北京大学航空宇宙学部を卒業し、工学士の学位を保有しています。