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発電用ガスタービンの長寿命化に向けた取り組み


新設計のインレットガイドベーン(IGV)アクチュエータ

ムーグは、発電業界向けのモーション制御分野で、過去20年以上に渡り主要なサプライヤーとして「業界初」となる技術を数多く提供してきました。2004年春には、すべての主要OEMメーカーが生産を縮小し、業界全体の先行きが危ぶまれましたが、当社は従来通りお客様のご要望の実現に全力で取り組んできました。革新的な企業は、不況下でも新たな解決法を見出し、困難な課題にも対処していきます。本稿では、タービンの稼働率と信頼性の向上を追求するOEMメーカーおよびお客様のニーズに応えるため、専用の油圧アクチュエータに対して行われた革新的な設計変更について紹介します。設計変更後の新しいアクチュエータでは、ロッドの表面硬度の向上による摩耗の低減、当社独自の高性能表面コーティングによるシールの寿命延長、高度なシール技術によるフローティングシールの固着および漏れの防止、ステンレス製ロッドによる腐食防止といった技術革新が導入されています。その結果、この油圧アクチュエータは、タービンの寿命延長とダウンタイムの削減を実現する信頼性の高い製品へと生まれ変わりました。ムーグでは、この高性能ハードウェアをアクティブサポートプログラムの対象とすることにより、稼働中のプラントで使用されている旧型製品との交換をサポートしています。

タービンのダウンタイムの原因調査

ムーグのカスタマーサービスの担当者は、複数の異なるガスタービンプラントで発電装置用アクチュエータが不具合を起こしたとの連絡を受けました。技術部門がこの問題を調査したところ、コマンド信号とフィードバックとの間に発生する「ミスマッチ」が原因であることが判明しました。信号の変動幅が3%を超えると、エンジンがトリップし、非常停止シーケンスが起動します。発電システムのタービンが非常停止すると、次に挙げるような悪影響を引き起こします。

  1. トリップ時にはエンジンが停止し、通常の冷却シーケンスによる冷却ができなくなります。運転中のエンジンの排気温度は、538℃にも達します。ブレードなどの非常に高温の部品が時間をかけて冷却できなくなるため、エンジンそのものの寿命が縮まります。
  2. さらには、ダウンタイムによってプラントの効率が低下して供給機能の停止回数が増え、メガワット単位の発電が停止してしまいます。

あるタービンプラントで、この不具合の発生回数が増えたことで、問題が明るみに出ました。そこで、この問題の調査および解決に向けて、専門エンジニアチームが招集されました。アクチュエータの各部品の寸法が許容公差以内であることを確認し、アクチュエータ全体の不整合および予荷重、その他の寸法設定を点検しました。調査チームは、ロッドと金属製フローティングシール(ロッドシールへの圧力低減に使用される部品)の間に摩損を発見しました。


ロッドと金属製フローティングシールの間の摩損

摩損は、ワニスによる付着物の蓄積と汚染に加え、フローティングシールのエッジの除去が不十分だったことにより発生していました。また、硬度を向上してシーリング面の表面仕上げを改善する余地も残されていました。ムーグの技術チームは、この大手ユーザーであるお客様の許可を得て、表面仕上げ、エッジ除去、材料硬化処理などの改良に乗り出しました。開始前に、出荷済みの旧型ユニット5,600個の故障率を計算したところ、およそ0.5%であることが分かりました。これは、統計的な故障率としては小さな値ですが、この業界のお客様にとってはダウンタイムの重大な要因でした。

2007年、ムーグは、油圧アクチュエータの再設計を開始し、解決すべき問題点を洗い出しました。大手のエンドユーザーの協力を得て、以下のデータが得られました。

稼働中のアクチュエータは、1年間に約100万回もの微小サイクル動作を行う可能性があります。つまり、31.75 mm以下のストローク動作を繰り返すことにより、合計の移動距離が約50 kmに近づくことを意味します。


ガスバルブアクチュエータのライフサイクル耐久試験

このアクチュエータの制御には、潤滑油が使われていました。潤滑油は、ベアリングの摩耗によって汚染されやすく、システム内の各部に配置されたベアリング内で高温にさらされます。潤滑油は、熱と圧力によって時間とともに分解してワニスを発生させ、サーボアクチュエータの運転に悪影響を及ぼします。新しいソリューションでは、これらの問題に対処しながら、従来と同じ高い動作性能とフォームファクターを維持することが求められました。


潤滑油の分解で発生するワニスによるサーボアクチュエータの運転阻害

ムーグのソリューション

ガスバルブおよびインレットガイドベーン(IGV)用のサーボアクチュエータについて、作動要件を満たしつつ信頼性を向上するためには、新しい設計アプローチの採用が必要でした。厳しい要件をクリアする過程においては、ムーグが軍用および民生用航空機の試験システムやフライトコントロールといった、過酷なアクチュエーションアプリケーションを通して培った信頼性の高い製品の研究開発および設計の経験が生かされました。

ムーグでは、このガスバルブおよびIGV用のサーボアクチュエータの再設計による、メンテナンス時期までの耐用期間の延長を目指しました。そのため、他の高サイクルアプリケーションに実装され、有効性が確認されている素材とコーティング加工を採用し、実際の使用時と同じ動作プロファイルに基づいて数百万回のサイクル試験を実施し、設計の検証を行いました。

新しいシールパッケージおよびアクチュエータのライフサイクル試験の間に、営業部門では、同様の故障モードを経験したお客様に呼びかけ、実地試験への協力を求めました。これに対し、テキサス州に拠点を置く大手のユーザーが、新設計品の1年間の実地試験を引き受ける意向を示しました。ムーグは同ユーザーとの試験契約を締結し、実地試験を開始しました。

1年間の実働試験を終えたガスバルブ用アクチュエータはムーグに返却され、テストと検査が行われました。検査にはユーザーの技術チームが招かれ、革新的な設計の有効性が実証されました。ロッドとシールパッケージには劣化の痕跡は一切見つからず、部品すべてが期待通りに機能していました。図3の写真に見られるように、アクチュエータの内部部品には、潤滑油から発生したワニスの液滴が付着していました。つまり、新設計がワニスによる汚染の影響に耐えられるということです。当初の課題は完全に解決され、ガスタービンの寿命の延長が可能な新設計が完成しました。


従来の設計品(左)および新設計品(右)。
新設計品は、1年間の実地試験によって劣化のないことが実証されました。

ムーグのガスタービン用サーボアクチュエータの特長と利点

  • ロッドの表面硬度の向上により摩損を低減し、長寿命と漏れの最小化を実現します。
  • ロッド表面に施した高性能コーティングによって表面仕上げが改善し、シールの耐用寿命が向上します。
  • 高度な密封技術によって、ロッドシール背後のシステム圧力を低減します。
  • ワニスおよび粒子状汚染物質による固着や摩損が発生しやすい金属製フローティングシールを使用していません。
  • 腐食防止のためにステンレス製ロッドを採用しています。

次のステップ

改良された新設計のサーボアクチュエータは市場に導入され、稼働中のガスバルブおよびIGV用アクチュエータとシームレスに交換することができます。ムーグでは、プラントの計画的停止時および非常時に利用可能な交換用の在庫を提供する革新的なサービスプログラムを新たに導入し、世界各地で提供しています。ムーグならびに北米・中米・南米の認定ディストリビューターでは、簡単かつ短時間で準備可能な専用アクチュエータの在庫を常に備えています。

ムーグのエンジニアは、世界でも最も厳しい要件を満たすアプリケーションに携わることでノウハウを蓄積し、現場の問題に対処したソリューションの提供に役立てています。モーション制御分野の技術的課題を抱えるお客様は、ぜひご相談ください。

著者について

Ron Gramzaは14年ムーグに在籍しています。この間、産業グループの北米・中米・南米事業所でセールスエンジニア、リペアアドミニストレーションスーパーバイザーなどの任務に就き、現在はアフターマーケットサポートマネージャーを務めています。1996年の入社当時には、航空宇宙向け製品の試験エンジニアとして勤務しました。また、ニューヨーク州立大学バッファロー校で電気工学を専攻しています。